<管理人による感想です>
というわけで感想を。

蛇足ながら、わたくしの感想を。


本作 「Change the world」 「Letters」 での結論を裏返すような部分がありまして、
実のところ前作の感想に「私自身はそうは思わないのですが……」と否定的なことを書いてしまった身としては、
「ああ、余計なことを言ってしまったかもなー」と反省していたわけですが。
しかし作者えいみすさんのあとがきを読むかぎりでは、構想にあった展開とのことですので、ちょっとホッとしております。

いずれにしても本作の読みどころは後半の 「天神デエト編」 にこそあると思いますので、啓子ばーちゃんの人生アレコレについては 「長すぎる前フリ」 とでも思っていただけると……!(←ひどい)

ああ、いいですねいいですね〜、デート編。
えいみすさんが真奈視点でお書きになるところの永一には
「なにかしてあげたくなる」
ようなところがありますね。

私自身はこのキャラクターを、特別に不幸な少年であるとは思っていないのですが(誰しも人生にあれくらいの傷は等分にかかえているものではないかと……)。
しかしですね、作中のあの、
「俺、人の幸せな話を僻むような男に見えるかい?」
というセリフには「うーわー! なにこの男!!」と鳥肌をたてましたね。
「いや見えるから言われてんだよ」とツッコミながらも、
うわ私としたことが、何かしてあげたくなってきたよ?! と(具体的には  おにぎりを握ってあげたりとか   したくなる。お、おふくろさん化……?)。
つまりこれは、真奈の目を通して見ている永一に魅力があるということで、恋愛ものとして成功しているのではないかという話なわけですが。

真奈というキャラクターに関しても、新たな発見が。
この何でも出来すぎるスーパー・ヒロインについて、作者えいみすさんに「いや、もっとウジウジした人なんですよ」「ぜんぜんクールではないんですよ」と説明されていても、読み手としての私はいまひとつピンときていなかったのですが、ああー、志村視点「Letters」と重なる部分の描写を読むと、なるほど確かに「意外なほどああだこうだと考えている」のですね……。
一人称主人公の語り手としての宿命かもしれませんが、他者のこまかい部分をキビシイまでに非常によく見ているし、比べるのもどうかと思いますが、このひと、私という人間の数倍はモノを考えている……!
しかし、その分量は多くとも、かなり理路整然と自分の思考を説明できているので、「わかってなくて迷っている」雰囲気はまったくなく、結果として「クールだね」という感想に落ち着くわけですが(なんていうんですか、うじうじ迷っている人は迷っているという自覚すら、分かってないひとは自分が分かってないことすら自覚していないものなのですよ……)。
本作はこれといって事件が起きるわけでもなく、本当にただただ「ふたりのデート編」であるのですが、真奈が過去を振り返って思いを語るというのが新鮮で、これが本編に入ってないのは残念なような、ここで読むことができてトクしたような気分でした。

私自身には、自分がつくったものではないキャラクターを動かすというのが、
どう考えても出来そうにない(うううーん。ちがう媒体のものならアリかもしれませんが、小説→小説はムリそうですね……)ので、こういった面倒くさい(と、思います。かなり)作業を楽しみながらこなしてしまう作者さんには脱帽です。
かなりこまかな部分にまでお気遣いいただいて(えええーと、永一が自分の女性経験についてどう認識しているかとか!)、確認までしていただきまして、ありがとうございました。
志村の志村っぽさ、永一のダメな子ぶりなど、私自身の解釈と同じ部分、違う部分も含めて、大変楽しく読ませていただきました。

さてさて、次ページにはオマケ企画として、作者さんにアンケートの回答をいただいております。
今回の天神デートがよくわかる地図などもお借りしてますので、こちらへどうぞ。