宮尾登美子作「天涯の花」の天涯花とは、剣山に咲くキレンゲショウマのことだそうですが、
そして世間的には天涯花あるいは天蓋花とは、彼岸花のことであるようですが、
私にとっての「天蓋花」は、「曼珠沙華」の本来の意味であるところの「天上の花」なのですよね。
この「家族のひみつ」話は、あまり後味のよくない内容で、番外のショート・ストーリーにはふさわしくない題材なのですが……。
まあいいか、と思ったのは、語り手が永一というキャラクターだったからで。
もしも語り手が他の人物であったなら、これはまったく違う、悲劇的な物語になっていたような気がします。
祖母の秘密というのは、つまりは永一自身の出生の秘密(!)につながってくるわけで、祖母の子供が生まれていたら、このひとはこの世にいなかったはずなのですね。
しかし、この主人公は物事をそういうふうに考えないので。
あいかわらず、良くも悪くも自分のことはわりとどうでもいいひとであるので、なんかこう、腹を立てる部分が違ってしまい、真実を暴くような物語にも、悲劇的な物語にもならないような。
私自身は永一というひとに「幸せになってもらいたい」と思っているのですが、今もそういうわけで、何がこの人の幸せなんだか不幸せなんだか、分からないまま……。
志村はよく、けなげに尽くしていられるよなー、と思ったりします(他人事?!)。
余談ですが、OVER本編は「赤い花」の出てくる話で、こちらは「白い花」の出てくる話なのです。
私は花も木も好きな人間なので、どちらも「こういう花」という設定があるのですが、
なにしろ語り手本人は花の名を知らないひとなので、あいかわらず出せない花の名前……。
そしてもっとおそろしいことに、とうとう出てこなかった、永一パパの名前……。 ←あるんですが