*Letters超解説(うそです感想ですー!)*

まずは、ボンヤリ曖昧なうえに後ろ向きな元ネタから、
ラブありアクションありの、とても爽やかな青春ドラマ(!)を書いてくださったえいみすさんにお礼を申し上げます。
素敵な物語を読ませてくださって、ありがとうございました。

ちなみにこの物語に出てくる「真奈」という女子高生は、もちろんわたくしではなくー、
えいみすさんのところの
「砕ける月」(完結)
「Left Alone」(連載中)
で主役を張っている、スーパーヒロインです。

しかしアレですね〜、ふだんの真奈はけっこう自己評価が低いひとなので、せっかくの美形設定が読み手に認識されていなかった(私が認識していなかっただけかも……)気がするのですが、今回の志村視点(えいみすさんはよく分かってくださっているようですが、ヤツは異性のスタイルを結構きびしく見るタイプのイヤな男です。特に足とか!)で、ようやく彼女の美しさが分かりました。
いやー、意外な収穫です。真奈を見る目がちょっと変わりましたよ。

いえ、それはともかく。

そもそもの「天蓋の花」という私が書いたほうの掌編ですが、
私自身はこれをあまり書庫に載せる気にならずに、わりと長い間放置していたのですが、
それが何故かと言えば……

永一が成長していないから、なのですよね。

私は「物語とは成長譚であるべき」とゆー、ガチガチの前向き論信者であるわけですが、
どうもこのキャラクターについては、簡単に生き方を変えられるとは思えないのですね。

ああ、こういう人はなー、
一回死にかけたくらいでは、どーもならんでしょう。
むしろ正春という一種の心の支えを失って、実際のところは後退しているのではないでしょうか……とさえ思っていたわけですね。
そういう姿しか、思い浮かばなかったのです。
これはもうスタイルとか性格ではなく「生き方そのもの」になってしまっているわけで、
どうやっても、この感受性(あんまり感じないようにする)→思考(何かあると納得のいく理屈をつけてしまう)→行動(ていうか行動しない)という強固な永一メソッド(なにそれ)が崩れるというのは、考えにくい。

えいみすさんがあとがきで「永一からの視点では閉ざされた物語になる」と書いていらっしゃいますが、これは非常によく分かります。


そしてこの物語「Letters」ですが、
ここでえいみすさんは――意図的にか結果的にかは私には分からないところなのですが――凄いアクロバットでこの問題を解決してしまっているのです。

・舞台を旅先という非日常の空間にする
・視点人物を志村にする
・第三者(ここでは真奈ですね)を登場させる

作中時間では二日ばかりのうちに、いつもの志村であれば追い払ってしまうはずの女の子ポジションに、
見知らぬ土地のガイド役として頼らなければならない、追い払うことのできない強烈な個性のある人物(いえ腕力の話じゃなく……まあそれもあるかな〜)を据えて、彼女によって変えられていく永一を見ることにより、志村の気持の変化を書く。
志村が変わったことにより、一種の親子関係のような二人の関係性を「親友だ」と変化させ、この二人の成長譚としているわけですね。
ちなみに最後に「エピローグ」としている部分は、えいみすさんのところで「Letters」完結後のサプライズのショート・ストーリーとして掲載されたものなのですが、これがあってこその「Letters」ではないかと思いまして、物語に加えさせていただきました。
私は、志村のこの最後の一言がすごく好きなのです。


ところで、この物語のクライマックスで真奈からの「こうだったのではないか」という永一の祖母についての指摘があるわけですが、
私は……私自身は事実はそうではないのでは、と思うのです。
肉親だからこそどうしても赦せないことも、心から憎むこともある。
これが他の人物からの指摘であったのなら、「ああ、そういうことは承知の上で、あえてそう言ってくれているんだな」と思うところなのですが。


作中で私の大好きな由真ちゃん(こあくま〜v)が言うように、永一と真奈というキャラクターはとても似ているところがあると思うのですが、決定的に違うところがあって、それがどこかと言えば、真奈はどれほど辛い局面にあっても自分を騙したりはしない――これこれこうだから、まあ仕方がないと永一がいつもやっているような自分納得方法でやりすごす、ということはしないのですよね。


だから真奈が「そうじゃないんだよ。それは愛情だったんだよ」というからには、彼女はそう信じているわけです。
これが彼女の持つ強さではないかと、私は思います。

人間というのは、なかなか自分では自分を赦してはやれない生き物なので、
こうしてへこたれない人に背中を押してもらうことも、時には必要なのかもしれません。

秋月という土地と、そして思いがけない開けた風景を永一に見せてくれた、真奈の名ガイドさんぶりに感謝です。